研究テーマ

蛋白質で作る,分子機械!!

 我々生命の主体である蛋白質の中には,依然人工的に模倣しがたい高い分子認識能や触媒能を持つものが数多い。しかし天然蛋白は応用の観点から必ずしも最適な性質を持つとは限らず,我々はここに蛋白質工学の醍醐味があると考え,さまざまな蛋白質の,合目的デザインと分子進化的技術,さらにケミカルバイオロジー的技術をも用いた創製を試みている。目的にかなった方法を開発しそれを駆使することで,天然蛋白質ではできない芸当ができる蛋白質が創製できるものと期待している。これらは現在注目を浴びつつある,合成生物学と呼ばれる研究領域においても必須のツールとなるであろう。これを言い換えれば,我々の目的は機械屋さんが鉄やプラスチックで作っている機械を蛋白質で創ること,とも言える。そして出来たら,おもちゃでなくて実生活でも役に立つ機械を作りたい,と願いつつ研究を進めているところである。


 なかでも我々が現在特に力を入れているのは,抗体可変領域(Fv)あるいは他の蛋白質ドメインを材料とした,抗原依存的な2量体形成を利用した新規な物質濃度測定法(オープンサンドイッチ法,OS法)と,これに基づく各種検出法・センサーの開発であり,これは他にない特長と有用性を持った検出法(ならびに選択法)であると自負している。


その他を含め,現在進行中のテーマのいくつかを以下に紹介する。


現在行っているテーマ(抜粋)

抗体可変部位の安定性を利用した新規免疫測定法(OS法)
 - 環境汚染物質,ペプチド等低分子の高感度非競合検出系の開発
 - OS法に適した人工抗体選択系の構築と高親和性抗体の選択
 - 蛋白質修飾の検出とその細胞内情報伝達検出への応用
 - OS原理に基づく蛋白質の分子進化

抗原依存的なクエンチ解消に基づく新規蛍光免疫測定素子Q-body

変異体発光酵素の機能相補を利用した新規分子間相互作用検出系FlimPIA

・遺伝子操作を必要としない抗体酵素融合タンパク質発現法の開発

任意の物質に応答して活性の変わる人工アロステリック酵素
・天然酵素より高い活性と安定性を持つ診断用酵素の創製

・発光酵素に関する研究
 - 最小サイズの発光酵素picALucの創製